ブレサイ公開一周年に寄せて

「BREAK THE SILENCE THE MOVIE:PERSONA」というBTSドキュメンタリー映画が2020年の9月10日から全世界で公開されていた。日本では公開から約一か月間と少し、映画館で上映されていたようだ。

BTSドキュメンタリー映画として、これは3作目となる。ちなみに毎回頭文字をとるとBTSになるようになっている。

Burn The Stage、BRING THE SOUL:THE MOVIE、そして本作。

BREAK THE SILENCE (以下ブレサイ)は2019年5月から始まったLove Yourselfワールドスタジアムツアーのドキュメンタリーで、舞台はアメリカのシカゴ、NY、ブラジル、イギリス、フランス、日本、サウジアラビア、そしてソウルを巡りながら、メンバーインタビューとツアー中のオフタイム、一人ずつソロステージとを『交差編集』しながら進んでいく。

これが非常にうまく構成されていて、絶妙~~~にコンサートの内容は見えない。なので見てるとめちゃくちゃ「うお~~~~~~~~ライブ行ってみたいいいいいい」となる。最高のプロモーションである。しかし単純に、映画としてもとても面白い、と思う。

2020年9月10日、この映画を見てBTSの沼につま先からきりもみ回転で落ちた。今日でそれから一年経つので、見返すたびに増えていく字幕だけのスクショ供養も兼ねて、ブレサイで心が動いたところ、なぜ動いたのかを書いておこうと思う。
基本的にはほとんどBTSの歴史を知らなかったあの初見のとき、2020年9月10日の衝撃を書いて、必要があれば今見て思うことを追記しようかと思う。

【お知らせ】めちゃくちゃネタバレあります

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たまたま転職期間中のお休みだったので、公開初日の初回に見に行った。六本木のTOHOシネマズだ。
私はその時、まだARMYではなかった。そもそも人生で一度もアイドルなど芸能人にはまったことがないし、これから先もはまることはないと思っていた。
BTSについては半年近く布教してもらっていて、確かにかっこいい、踊りも歌も。メンバーも大体わかるかな。うーん、でもこの中では誰が好きかわからないな。。。(まだまだARMYとは名乗れないな)。というぐらいの「好き加減」だった。とはいえ、初日の初回を見に行こうと思うぐらいの好きさはあったんだけど(ごにょごにょ)。

でもそれは、この映画を見るまでの話。

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I wish I could love my self

映画はLove Yourselfツアーの最終地点、ゴールであるソウルの最終公演でのコメントからはじまる。
※引用は全て「BREAK THE SILENCE THE MOVIE:PERSONA」からです。

RM「Reflection(という曲)の最後のフレーズ「I wish I could love my self」の意味をずっと考えていました。
「love myself」…自分を愛する、とは何か。
それで「僕もわからないから一緒に探してみないか?」
そうして始まった旅でしたが、前回(花様年華)が非常に熱い支持を頂いたので、これも受け入れていただけるかが不安でした。

今「自分を愛してるか?」と聞かれたら、まだよくわかりません。
でも、なぜか愛せるような気がします。

ここでコンサートで赤いキャップをかぶったRMがわんわん泣いているシーンから切り替わり、
作業室でのRMインタビューが入る。

「不幸と言えば不幸で 幸運といえば幸運ですが、ソウルの最終日に思い切り泣いて、それまでの記憶は全部消しました。」

「当時の僕の感情は強烈すぎて、大きな塊になって残っていました。感情の副産物が僕の器にたまっていると、次に進めないと思ったんです。」

「僕たちには次のミッションがあるから。しかも次のミッションでは前回のレベルを超えなければなりません。このインタビューの瞬間も、自分のするべきことに集中できるというのは、大きな幸運だと思います。」

記憶…しかもおよそ一般人では体験のできない、一生の思い出に残るような記憶、を、全部消したってどういうことだろう、と思った。
頭を切り替えました、というだけではなくて「記憶を消しました」?

この人は意志や理性がめちゃくちゃ強いのだろうか。もしくはとても大きな恐怖心からくる防御みたいなことなのかもしれない。

「感情の副産物が僕の器にたまっている」については使う単語も組み合わせも初めて見る。ここで射貫かれてしまった。私は言葉にとても弱い。

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メンバーの自己紹介の中で、キム・テヒョンはこういう。

Vを担当している、キムテヒョンです。

Vのいないキムテヒョン?僕はいろいろなことを試したいと思う性格です。より良い人になるために、ずっと何かをしようと努力しています。

良い人になるために?良い人になるために?良い人???
ショックだった。良い人になるなんて言うことを、公言する人が存在するのだ、という衝撃。しかも芸能人で。
というか自分自身「良い人になりたい」というほどシンプルな向上心あったっけ?

ジン
自分を愛さなければ、他のことはできないと思います。悲観的なことを考えたときは自分をもう一度振り返り、何をすれば幸せになるか…(みつめなおす)

じ、自分を愛する…?え、これは国が違うからなのか?ずいぶん言いにくいようなことを…自分を愛する…?

この時、BTSがlove yourselfというメッセージを明確に持って活動してる時期って言うことを知らなかったので、物凄くびっくりしたのだった。

ジョングク
やりたいこともたくさんあるし、叶えたいことも…それが明確ではないけれど、ずっと何かを探している気がします。自分自身を。

デビューした瞬間から新しい自我が生まれたわけですよね

2つの自我を分離しなければと思っていたのですが。理由はわからないけど。でもよく考えてみたら、僕の好きなところが新しいJUNG KOOKになってるのに、どうして自分のいいところをあえて分離して考えるんだろう?

あれ、アイドル映画だと思って見始めてるけどこれなんの映画…?っていうかこんなことを考えて生きてるの?この人たち?キラキラしてて、バラエティでは芸人みたいに面白くて、さらにこんなにも真面目で

そりゃ人気出るわ…

PERUSONA(ペルソナ)

今回の映画のサブタイトルはPERUSONA(ペルソナ)。「ペルソナ 意味」で検索すると出てくるのは「ペルソナとは表向きの人格」。ふむ。

彼らの表向きの人格、それはRMであり、キム・テヒョンが「担当している」Vである。この映画は、BTSのメンバーとしての彼らと、「ただの韓国人の青年」である彼らの面を(もちろん見せることのできる範囲で)描いている。

表向きの人格と「そもそもの自分」の間で揺れたり戸惑ったり、表現の方法を選んだり、見せないようにしたり、様々な方法で彼らは自分の中のバランスを模索しながら進んでいく。

非常に仲がいいグループだと思っていたけれど、誰一人として模索の方法も道筋も同じではないようだった。それぞれが自分で向き合って考えているからなのだろうか。


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このままいくと全文書きおこしたくなってしまうので、特に胸を打ったRMのところを書くことにする。
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イカれないための闘い

ツアーの合間にできた自由時間でRMは家具工房へ行く。車中から続くインタビュー。

BTSや僕たちを動かす巨大な視線のようなもの…それからの逃避?
最初は逃避でしたが、対極にあるものを探す中で自然にたどりつきました。草、山、川、公園など

そうですね…芸術家にもいろいろあると思います。世界になかったものを作り出す芸術家がいれば、そうでないタイプなど。
僕はまた、そういうのとは違うタイプだと思います。
誰かは『それは芸術じゃない』『神秘性がない』というだろうし『芸術家たるものは』『苦しむべきだ』とか。
でもそうとは限らないと思います。そういうことより今の自分にできるいいことがたくさんあるし。もっといいことが多いと、自分を信じて守りたいから、イカれずにできるんです。

社会的な物議などを起こしたりせずに、前を向いて進めるのはイカれてないからだと思います。僕は弱い人間になりたくないし、恐怖に押しつぶされて恐怖に食われる人間になりたくありません。

博物館に行ったり、植物を育てたり、自転車に乗るのは、イカれないための闘いです。

(※~ここでTrivia 承 LOVEのコンサート映像がカットインして滝のような涙が出てくるわです~よくできてるよ…初めて見た時はわからなかったけど、歌詞の意味を知った今毎回ここで泣いてしまう。)

い、い、い、イカれないための???闘い・・・・・?????

待ってくれよ・・・何でそうまでしてアイドルしてくれるんだよ・・・この人たち、人生をかけているのか?

だって、これはそういう手段を見つけなければ「自分はイカれてしまう」と思った瞬間が何度かあったということでしょう。

このRMという人は常に自問自答している、考え続けている…。彼の中では「恐怖」が、「深淵」がすぐそばにあってこちらをみているようだ(やみくろのように)。
その存在をよくよく…きっと手触りまで彼はわかりながら、「僕はおまえに食われたりなんかしない」と自転車に乗り、自然のなかに行く。

どうしてそうまでしてBTSを、という問いの答えは後半のインタビューで出てきていた。

道がここにあるから進むんです。山があるから登るみたいに
運命と意志を共にする人が僕の隣にいて
道がここにあるから
だから進むんです 僕は人間だから

道がここにあるから、だから進む、なぜなら僕は人間だから。もう全部太字にして強調したいよ…

この言葉の重み…!
そしてこの中でとてつもなく好きなところは、

運命と『意志』を共にする人が僕の隣にい」る、というところ。

ただ運命の流れみたいなものに従っているわけでは決してなくて、BTSでいることも、RMでいることも、キム・ナムジュンでいることも彼は意志を持ってそこにいて、同じように意志をもったひとたち…メンバーやBTSというプロジェクトにかかわっているたくさんのひとたちが周りにいるということ。そして進む道が見えているということ。

恐怖についてじっくり考えるRM

恐怖にもいろいろな種類があるでしょう。それについてじっくり考えてみました。僕はそんなに完璧で道徳的な人じゃない。
または誰かをインスパイアできるような影響を与えられるような人じゃない
自分でもそう思いますが。

まずは「自分がどの船に乗ってるかを明確にわかってるか」そういう恐怖があって、
次に「墜ちたらどう生きるか」「イカれるんじゃない?」という恐怖
そして 今僕らの対象は世界だから。着ている服やとられる背景、インタビュー、歌詞まで、僕という人間の全てを検閲されている気がします。

「キム・ナムジュンという人間をちゃんとケアできているか」
そんな恐怖もあります。

「お金や名誉 使命感の他に」「何を手にしたのか」
これを手にしたら急にほかのことがとても大事に思える。もたざる人はそれをとても特別に感じる。
その繰り返しだから。

それから、「自分は人生を100%忠実に生きているか」それに対する恐怖。

そもそも恐怖についてじっくり考えてみているRMさんよ…。自分がなにを恐れているのかきちんと言語化できること、尊敬する。

考えることってとても難しいことで、練習が必要な部類のものと思っているけど、長年リリックを考えることが習慣になっているRMさんは自分自身のことであれば『井戸を掘るような』内省をしたりするんだろうか。それを誰かに話してこれただろうか。メンバーたちとそんな対話を重ねてきたんだろうか。だったらいいなあ。

光と影を同時に考えるRM

僕は物事を見るとき、光と影を同時に考えてしまうんです。
それは生まれつきの性格
だから幸せだったことを思い出しても、つらかった記憶も一緒についてきます。
あの時よかったけどバックスステージでは大変だった。
またはホテルに戻っては、ああだったこうだった。
それがセットで付いてくるんです。
だからなんかの感想を話す時、単に「幸せでした」と言うのは
自分としては釈然としません。それだけではないから。

じゃあ僕に問題があるのか?いいえ。
むしろ「幸せなのか?」という質問が問題だと思いました
それよりもう少し具体的なことを
自分で自分に問いかけてほしいです。
「僕は今幸せか」
こういう問いじゃなくて
例えば「僕は今愛してるか」とか

自分を責めるのではなく、問いが間違っているのでは?という視点って私はなかなか持てないんだけど、この人はなんでそんなことができるんだろう…。
きっと寝れない夜をたくさん考えて過ごしてきたんだろうなあ。それともlove myselfのたまもの?

映画はソウルコン、RMのコメントに戻る。

特に最近感じてることですが、SNSなどを見れば完璧すぎる姿ばかりですよね。
経済的なことや外見的なこと、ライフスタイルも。
その上にはもっと完璧な人がいて、その人よりさらに完璧な人がいる。
自分には何かがずっと欠けてる気がする…
慰めの言葉としては「今のままで大丈夫」と。
完璧もいいけど世界が見せつける完璧な姿じゃなくて
例えば僕の特徴でいうと肌が少し浅黒くて目はこんな形
声はこんな感じ…
それを受け入れて
みなさんのおかげで自分をもっと愛せるようになりました。
もう波に流されません!

最後、Mikrokosmosのコンサート映像の合間にメンバーのインタビューがはいる。話してるテーマはアミたちへの言葉なのかな?
ここは絶対本編を見て、直接聞いてほしいのだけど、その中からRMの分だけ。

人は通り過ぎていくもの。
愛して別れ、また愛しては別れる。

では過去に通り過ぎた人は自分に意味のない人か?
いいえ 。自分を作ってくれた人です。
それが現実です 。

「何かを得れば何かを失う」の繰り返し。

その過程で世界が僕たちに見せてくれないものを 
僕たちの間で交わしながら 束の間でも
僕の価値を受け入れてくれたんだから
それで満足じゃないかな

こん…っなきれいな表現…もうこのとき映画館で脱水症状になるかってぐらい泣いていた…。

「世界が僕たち(BTSとARMY)に見せてくれないものを
僕たちの間で(創り出して)交わしながら」

そう、それはボラへであり0:00でありMagic Shopなんだよね。
全世界に何千万人といるARMYたちが、間違いなく「私のための曲」「私のための言葉」だと思えるたくさんの宝物みたいなBTSのいろいろ。

この部分はBTSのファンになった人が離れていってしまうことについて話していると解釈しているのだけど、彼らはこんなふうに受け止めているんだなぁ。

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映画が終わって、脱水になりかけ&泣きすぎてお腹が空いた私は、BTSのちゃんとしたファンになろう…と映画館のトイレで思った。

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一周年だからなあ、と思いながらもう一度見返したらやっぱりiPhoneの写真フォルダは字幕のみスクショの黒いやつで埋まった。

画像1

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言葉を記録したいのでそれでも満足だったんだけど、公開当初の気持ちをまとめたかったのと、言葉をまとめたかったので改めてnoteに書きました。
コメンタリーも観て、さらに思うところがあったけど、今日はここまでにしておきます。体力が尽きた笑。ながなが読んでくださった方、ありがとうございました。

もし、もしもまだ未見の方がいたら、絶対見てほしいの。。。
絶対後悔はしないよ。。。

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